Culture  

連載 ART to GO 「フェルメール展」

国内では過去最多のフェルメール作品が一挙に展示されている話題の『フェルメール展』が上野の森美術館で開催中。その見どころと魅力に迫ります。
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ヨハネス・フェルメール《牛乳を注ぐ女》 1658年-1660年頃 アムステルダム国立美術館 Rijksmuseum. Purchased with the support of the Vereniging Rembrandt, 1908​

「今年、最注目の展示」との呼び声が高い理由

「光の魔術師」とも称される、17世紀オランダの黄金時代を代表する画家ヨハネス・フェルメール。43年という生涯の中で、現存する作品はたったの35点ともいわれる寡作のアーティストとしても知られています。 「フェルメール展」と銘打った展示が日本で初めて行われたのは、2008年のこと。 以来10年ぶり2度目の回顧展となる今回は、日本美術史上最高の計10点が一斉に来日しています(※東京展では期間限定展示も含めて「恋文」以外の9点、大阪展では6点を展示)。 わずか35点しかないフェルメールの作品数を考えると、これはまさに記録的なこと。 「今年のあらゆる美術展の中で、フェルメール展こそが最注目の展示だ」との呼び声が高いのもうなずけます。 東京展の最大の見どころは、来日するすべての作品を集めた「フェルメール・ルーム」。希少なフェルメール作品をじっくりと見比べ、新たな魅力を発見し、その素晴らしさを堪能できる、まさに奇跡の部屋です。

今なお瑞々しいフェルメールの作品

ずらりと並んだフェルメール作品をじっくりと見比べてみると、さまざまなことに気付きます。 最初に感じるのは、フェルメール作品全体に流れる現代的な瑞々しさです。その鍵は、他の同時代の作家とは一線を画す先進的なテクニックと、構図の新しさにあります。
フェルメールの色彩といえば、今回来日している作品《牛乳を注ぐ女》などに見られる、青と黄色、そして光の白。 現代の色彩理論では、青と黄色は、お互いの色を引き立て合う“補色”の関係であることが知られていますが、フェルメールはその理論が確立するよりも1世紀半も早い17世紀に、補色の関係を絵の中で体現してみせたのです。
《牛乳を注ぐ女》は、窓辺にモチーフが寄っており、牛乳を注ぐメイドの視線も手元に向けられています。 モデルの視線がこちらを向き、モチーフを画面いっぱいに描くのがスタンダードだと考えられていた当時、フェルメールのこのような描き方はとても珍しいものでした。 この絵画を赤外線やX線写真で調べてみると、メイドの後ろの壁には大きな地図のようなものが描かれ、後ろの箱のような足温器は、洗濯かごを消して改めて描いたものだったことがわかりました。 つまりフェルメールは、メイドの視線をあえて外し、余計なモチーフを取り去ることで、鑑賞者の視線を作家の狙い通りにメイドの手元へ誘導することに成功したのです。
このように、先進的な絵画技法と研ぎ澄まされた構図こそが、フェルメールの絵の瑞々しさの秘訣といえそうです。
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