Culture  

ピンクの思考

ピンクは、多くの女性に対して何かしらの感情を抱かせるといっていい、不思議な色です。私たちは、なぜかくもこの色に固執してしまうのか。「ピンクが好き」「ピンクが苦手」という意識はどこから来るのか。時代とともにピンクの役割が変貌していくことに注目しながら、ピンクという色について考えてみました。
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ピンクにロックオンされる私たち

ピンクといえば、カワイイ、可憐、幸福、ソフト、ファンシー、癒し、そして「女の子」。男の子はブルーで女の子はピンクという法則は、ベビー服やおもちゃの世界からすでにはじまっており、私たちは生まれた瞬間からそのイメージを享受することになる。ピンクという色はミルキーで甘く、レースやリボンやラメがよく似合う。プリンセスに憧れ、お人形を持ち、キラキラに包まれたいと願う多くの幼い女の子たちは、程なくしてピンクに夢中になるものだ。しかし成長するにしたがって、社会におけるピンクのイメージにどう向き合うかを考える時がくる。
日本でピンクが女の子の支持を得たのは1970年代。昭和初期から「桃色」が性風俗の表現に使われていたため、70年代後半〜80年代のアイドル文化を経てようやくピンクが女の子たちのものとして定着した。と同時に、ピンクは当時のアイドルが持っていた「ぶりっ子」のイメージを担うことにもなった。そこから90年代後半のギャルブーム、2000年代の愛されOLブームに押され、さらにピンクが溢れていく。時代は変われど、一貫して「幸せ」を象徴するカラーとして、私たちの身近に存在し続けてきた。
ちなみにアメリカでは、1950年代にピンクが女性に大人気となった。裕福な専業主婦の象徴として、である。1970年代以降、看護師や保育士、家政婦、秘書などの職種は「ピンクカラージョブ」と呼ばれるが、これらは高度な専門技術を必要としない女性の職業ということで、結婚・出産で退職することを前提としているため賃金が安い。アメリカにおけるピンクのイメージもまた、女性的なのである。
そんな背景があるから、どうしても私たちはピンクに敏感になってしまう。強くありたいと思うと、ピンクがふさわしくないように思えてくる。一方で、癒しが欲しいとピンクに手を伸ばしてしまう。ピンクが持つ感情的なイメージがはっきりしているからこそ、ピンクを選ぶ時に迷いが生じてしまうのだ。

甘くないピンクを用いた玩具

「幸せ」の定義が多様化してきている昨今、女の子たちを取り巻く環境も少しずつ変わってきている。それが透けて見えるのが玩具の世界だ。ただきれいなドレスを着て踊るようなお人形の世界に、STEM(ステム)教育の風が吹き始めている。その様子は書籍『女の子は本当にピンクが好きなのか』(堀越英美・著/Pヴァイン刊)に詳しい。
STEMとは、Science、Technology、Engineering、Mathematicsの頭文字をとった、2000年代に生まれたアメリカの教育モデルである。科学や数学などの理系分野で活躍できる人材を育成するために、STEMスキルを伸ばす教育(プログラミングやロボット製作など)が小学校から大学まで行われる。STEM領域の職を志す女性はまだまだ少ない。しかしそれは、技術職に興味を持つ糸口不足が原因でもあるからだ。
そこで近年市場を賑わしているのがSTEM玩具だ。ブームの発端は、2013年に生まれた女性エンジニアによる「Goldie Blox(ゴールディ・ブロックス)」。ゴールディという女の子が冒険に出かけ、マシンを作って問題を解決するという、エンジニアリングが学べる玩具だ。12年には、レゴ社からも女児向けの「Lego Friends(レゴフレンズ)」が登場している。国籍も多様な女の子たちが、ロボットを友達にしたり、サーキットレースをしたり、化学実験をしたりする。これらの玩具は、自分で学ぶことや、その技術を使って状況を進展させることの楽しさを教えてくれるだろう。
女児向けのSTEM玩具にピンクはもちろんあしらわれているが、ラベンダーや水色、黄色などと組み合わさってその知的な世界に溶け込んでいる。そして、パステルカラーよりも少しヴィヴィッドなピンクが意識的に使われている。だから甘くない。女の子にパワーをくれる色、そんなかっこよさのあるピンクなのだ。
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