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連載 CREATOR'S EYE
第2回「新しく友達になった人を連れていきたいお店」

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気の合う友人と集う

文壇バー「猫目」

弁護士・水野祐

5年ほど前、現代美術家の束芋さん、舞踏家の森下真樹さんとともに「遺言書を書く」というワークショップをやったんです。束芋さんのご実家では、元旦に書き初めではなく「遺言を書く」という習わしがあり、一度きちんと遺言書の書き方を学びたい、というのが企画のきっかけだったみたいです。
まず森下さんのワークショップで参加者全員が身体を動かしたあとに、私が遺言の法的なレクチャーをして、実際に遺言をその場で書いてもらう。その後、束芋さんと作品を遺すことや死生観などにトークするという一日がかりのイベントでした。遺言書の作成は、著名な芸術家の遺言など、弁護士として何度か経験があったので、いわゆる一般論だけでなく、守秘義務に反しない限りで過去の経験談もお話しました。参加者も変わった人が多くて。20名くらいだったかな。そこで出会ったのが束芋さんの友人の「猫目」のママ、佳菜子さんでした。
「猫目」に行くまで、新宿はあまり縁のない街でした。歌舞伎町の中にあった新宿リキッドルームもなくなっちゃったし、ゴールデン街なども人並みには行っていましたが、どちらかというと居心地が悪いイメージがありました。安心して行けるお店ができると、街が違った顔をしてくるから不思議なものです。どこかで食事をして、その後に訪れることが多いですね。バーとスナックの中間といった趣で、真っ黒な店内にはお店の馴染みの方のアート作品が飾ってあったり、本やレコードプレイヤーがあったり。段々と、友人を連れても行くようになり、近年は毎年1月に友人と合同で新年会をやらせてもらったりもしています。お客さんの層は作家や編集者、美術家、建築家の方など、「文壇バー」と呼ばれるだけあってクリエイティブな分野の仕事をされている方が多いでしょうか。やや年齢層は高めですかね。
自分がおもしろいなと思う友人が連れてくる友人がやっぱりおもしろいっていうことが多いので、普段から平日の夜はそういう人たちと会食、と言うと堅いですが、文字通り会って食事する、そういう過ごし方が多いです。でも、そういうところから自然と仕事も生まれてくるから不思議なものです。仲良くなるためにはお酒が必要だ、なんて言うつもりは全くなくて、でも自分の中では気のおけない友人たちと人生で何度そういう夜を過ごせるかが人生だ、みたいな感覚があります。なんでそんな風になっちゃったんでしょうね。でも自分にとってそれはかけがえのない時間なんです。
猫目
住所:東京都新宿区5−12−1 地下1階
営業時間:20時〜翌2時
定休日:日曜、月曜、祝日
電話:03-3350-4304
水野佑
水野祐(みずの・たすく)
弁護士(シティライツ法律事務所)。Arts and Law理事。Creative Commons Japan理事。IT・クリエイティブ・まちづくり分野に特化したリーガルサービスを提供している。著作に『法のデザイン −創造性とイノベーションは法によって加速する』(フィルムアート社)など。昨年、初めて餃子作りを体験しました。今年はタコス作りに挑戦したいです。
Twitter:@TasukuMizuno​
Photographs by TAMAMURA Keta(SHOP)、TAKAHASHI Munemasa(MIZUNO Portrait)
Text by HATTORI Madoka
Edit by HATTORI Madoka、OBAYASHI Shiho
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