Culture  

作家が語る「執筆のコツ」10選 ~ 猫、夜更かし、酒は抜き

share
ヘレン・ゴードンと私はこの1年、サミュエル・ジョンソンやグラブ・ストリートの時代から、シリコン・ラウンドアバウトロリー・ムーアの時代まで私たちのお気に入りの作家たちによる執筆業についての考察やコツ、エッセイをまとめた本『Being a Writer』の制作を進めてきました。
本書の調査ですぐにはっきりしたのは、クリエイティブな執筆活動に取り掛かるための「正しい方法」など存在しないということです。少し気が楽になりますよね。作業をするのに静かな仕事部屋で自分を隔離する必要がある人(ジョナサン・フランゼン)がいれば、近所のコーヒーショップでこそ仕事がはかどる人(リヴカ・ガルチェン)、そして家事と育児の合間の1時間を必死で捻出する人(若き日のアリス・マンロー)も同じ数だけ存在します。
またそれとは反対に、多くの作家が、ある特定のアイデアやアドバイスを共通して持っているということも明らかになりました。チャールズ・ディケンズは1866年にブルックフィールド夫人に宛てた手紙の中で「あなたは、登場人物が自分たちの言葉で語り、行動すべき場面を、あなた自身の声で息もつかせないほど性急に語ってしまうことで、常に物語を急がせてしまっている」と指摘しています。創作の基本は「SHOW, DON’T TELL(語らず見せる)」です。この3つの単語は、21世紀の現在でも文芸(クリエイティブライティング)のクラスを受講したことのある人は皆聞き覚えがあるでしょう。
私たちが制作した本には、厳格に実践的なものから、見事に風変りなものまで、執筆についてのアドバイスが多数集められています。作家たちは、うまくいったことはもちろん、うまくいかなかったことについても語っています。原稿を終えることができなかった、出版社が見つからなかった、登場人物や複雑な設定をうまく形にできなかった、プロットが手に負えなくなった――などです。ここで、その中から私たちのお気に入りのコツをほんの一部ご紹介。向上心のある作家ならどれも肝に銘じておくべきことだと思われるものばかりです。

1. ヒラリー・マンテル:少しの傲慢さがとても役立つこともある

「作家が培うことのできる最も役立つ資質は自信――傲慢さです(ただし、自分でコントロールできる場合に限ります)。書くことは自分自身を世界に押し付けること。世界から自分に対しての賛同を得られなくても、自分自身の能力を信じなければなりません」

2. レフ・トルストイとHP・ラヴクラフト:自分が最高の力を発揮できる時間帯を選ぶ

トルストイは朝一番に取り掛かるスタイルです。「私はいつも午前中に執筆します。最近、ルソーも朝起きて短い散歩に出かけてから仕事を始めていたと聞いてうれしく思いました。午前中は特に頭がフレッシュ。ベストな考えが最もよく浮かぶのは朝、まだベッドの中にいるときや散歩中です」
HP・ラヴクラフトのように夜型の人もいます。「夜、自分を取り巻く世界がそっとねぐらへ帰り、夢想家たちが自由になると、これまで息をひそめていたインスピレーションや能力がその魔法のような静かなひとときに湧き上がります。夜に書き物をしたことがないのであれば、その人が作家かどうかなんてだれにもわかりません」

3. ウィリアム・フォークナー:書くために読む

「読んで、読んで、読みまくる。駄作も古典も傑作もそうでないものまで読み尽くして、どのように書かれているかを知ることです。親方に学ぶ見習い大工のように。とにかく読むことです! 読んで吸収してから書きます。よく書けていれば自ずとわかる。駄文なら窓から投げ捨てよう」

4. キャサリン・マンスフィールド:何かを書くことは何も書かないよりまし

「振り返ってみれば、私はいつも書いていたように思います。それが駄文だったことも。しかし駄文でもなんでも、まったく何も書かないよりはずっとましです。」

5. アーネスト・ヘミングウェイ:調子のいいうちにやめる

「必ず調子のいいうちにやめることです。そして次の日に書き始めるまで気にしないこと。そうすれば、執筆している内容についてあなたの潜在意識が常に働きます。反対に、執筆について意識的に考えたり、気にしたりしていると、せっかくの調子を崩してしまい、次に書き始める前に脳が疲れてしまいます」

6. ジョン・スタインベック:一度に1ページまでにしておく

「仕上げなければという考えは捨てましょう。400ページのことは忘れ、毎日1ページだけ書く。そのほうがはかどるはずです」

7. ミランダ・ジュライ:草稿がひどくても気にしない

「この小説を書いていたころは今よりずっと無知でした。作家として劣っているように感じ、職場から帰宅すると『このストーリーは今でもすごく好きだけど、もっと上手に書けていたらよかったのになあ』なんて毎日言っていたものでした。当時の私は、自分が書いていたのが最初の草稿だということに気付いていなかった。最初の草稿こそが一番の難所だったのです。そこからは比較的楽になりました。なんだかプレードウ(子ども用粘土)に取り組んで、ずっといじっていられるような感じでした。何度も下書きを書き直すうちに、事態ががらりと変わっていき、登場人物が現れては消えて、謎を解決していく。『これがここにあるのはなぜ?』『とにかく削るべき?』と考えて、いやこれは削れない。むしろこの場面の鍵になるものだと気付く。私は、すべての疑問の追及が終わるまで信念を貫き通す、その探偵のような作業が大好きです」

8. F・スコット・フィッツジェラルド:書くなら飲むな

「私の場合、お酒を飲むと、長い本の構成を練り上げることや、見直し時の認識や判断を研ぎ澄ますことがうまくいかなくなることが徐々にわかってきました。短い話なら飲みながらでも書けますが、すべての流れを頭の中に入れておき、枝葉末節を容赦なく切り捨てていくための頭の回転スピードが求められる小説の場合はそうはいきません。完全に酒に酔って『Tender Is the Night』の第3部を書いた過去を取り消せるなら何だってやるでしょう」

9. ゼイディー・スミス:インターネットに接続しない

「インターネットに接続されていないコンピューターで作業しましょう」

10. ミュリエル・スパーク*:猫を飼う

「何らかの問題に深く集中したいなら、そして特にそれが執筆やペーパーワークに関わることなら、猫を飼うべきです。仕事部屋に猫と自分だけでいると、猫は必ず机の上に飛び乗ってきて、デスクランプの下に陣取るはず。ランプの光が猫に大きな満足感を与えるからです。猫は落ち着いて静かになり、何とも言えない穏やかさを醸し出すようになるでしょう。そうしているうちに、猫の穏やかさがだんだんとあなたにも影響を及ぼすようになります。あなたの集中を妨げる興奮しやすい猫の特性は机の上に座っていると完全に鳴りを潜め、あなたは失っていた自制心を取り戻すことができます。常に猫を見ている必要はありません。そこに猫がいるだけで十分です。あなたの集中力に対する猫の影響は素晴らしく、非常に神秘的です」
*(というよりは、ミュリエル・スパーク​が執筆した『A Far Cry from Kensington』のホーキンス夫人のキャラクター)
この記事はThe GuardianのTravis Elboroughが執筆し、NewsCredパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@newscred.comにお願いいたします。
share