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すべての女性を引き立てるクラシックな白いシャツ

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最近、何を着たらいいのか全然わからなくなってしまった時には、私は白いシャツを着るようになりました。ここに至るまでにはずいぶん時間がかかりましたが、最後には気づくことができてよかったと思っています。私が気づいたこと、それはつまり、人が「ワードローブの危機」に陥る原因は洋服ではなく、自分のアイデンティティにあるということでした。これは、本当の自分と他者から見た自分を一致させるための基準として服を用いる際に起きる問題でもあります。自分をよく見せたいという願望や、インポスター症候群なども絡んできます。ワードローブの危機がファッションの問題ではないとすれば、流行のものを重ね着したところで混乱を招くだけです。何を着たらいいのか混乱し、悩みそうな予感がした時こそ白いシャツの出番。白いシャツは、あなたの心を落ち着けてくれるはずです。

スタイリストのローレン・グラントは、キャリー・マリガンやメリル・ストリープ、フローレンス・ウェルチ、エリー・ゴールディング、アンナ・カルヴィといったセレブリティのスタイリングを担当していた時期、自分がハンガーレールにかかった衣装のうち、白いシャツをたびたび切り札として使っていることに気づきました。「クラシックな白いシャツやブラウスを着ると、どんな女性でもちょっとフランス風に見えるのです。そう見えて悪いことなどありませんよね?」そう彼女は話します。グラントは今月、ひねりを加えたクラシックな白いシャツのブランド「S.a.r.k」を発表したばかりです。ハイファッションのシャツ専門ブランドは現在拡大中のニッチなジャンルなのですが、S.a.r.kはその中でも新顔です。たとえばパルマー・ハーディングという東ロンドン発のブランドは、幅広い層に注目されています。ヘルムート・ニュートンにインスパイアされたコレクションは、テリーザ・メイ首相を含め多くのセレブにも人気があります。ファッションウィークでも、胸の大きく開いたポートレイトカラーと、裾にアシンメトリーなフリルがついた白い(もしくはかろうじて薄いブルーにも見える)品のいいシャツで一躍話題になっています。

一方、S.a.r.k(スコットランド方言でsarkはシャツのこと。グラスゴー出身の母にインスパイアされて命名)のシャツでは“悪魔”は細部に宿っています。映画『哀愁の花びら』の雰囲気が漂うファーストコレクションには、艶やかで真っ赤な付け爪をボタンにした「フェイクネイル・ブラウス」と、金属製の深緑と白のカプセルをボタンにした「プロザック・ブラウス」があります。グラントによれば、赤い爪のアイディアは、1970年に仏ヴォーグ誌に初めて掲載されたギイ・ブルダンの代表的な写真−−赤い唇のモデルたちの目が真っ赤な長いネイルの手に覆われている−−にヒントを得たそうです。「90年代、私の母は外出前に爪を美しい赤に塗っていたのですが、こうした思い出とブルダンのイメージをミックスしたのです。それを再現しようと私が真っ先にしたことは、ドラッグストアの「ブーツ」に行って、サリー・ハンセンの1ポンドのつけ爪を買って試すことでした(そして失敗に終わりました)」
プロザックのボタンは、バーミンガムにて手作業で製造され、本物のカプセルと同じように半分に開けることもできるのだとか。これはダミアン・ハーストや90年代の若手アーティストシーンへのオマージュだそうです(ドラマ『パトリック・メルローズ』が放映されている2018年には、現代風にも見えます)。「もちろん私だって、洗練されてクラシカルな、フランスっぽい女性のイメージが好きです。でも現実には私はイギリス人。だから洋服にはユーモアのセンスを込めたいし、誰かの眉をひそませるような驚きを与えたいと思うのです」とグラントは話します。

白いシャツは、時にとてもセクシーにもなります。1961年に『荒馬と女』のセットでイヴ・アーノルドが撮影したマリリン・モンローを思い出してみてください。彼女はさっぱりとした白いシャツと濃いデニムを身につけていました。またエリザベス・テイラーは、「すべての女性はワードローブに素敵な白いシャツを一枚持つべき」と、まるで命令でも下すかのように言っています。白いシャツがモデルたちのシンボルとして繰り返し使われているのも偶然ではありません。ピーター・リンドバーグが1988年にクリスティー・ターリントンやリンダ・エヴァンジェリスタたちをビーチで撮ったショット(これは2年後に英ヴォーグのカバーになった有名な写真です)は、スーパーモデルたちを集団で撮影した初めての写真のひとつですが、そこでモデルたちはオーバーサイズの白いシャツを着ています。パトリック・デマルシェリエが米ヴォーグ誌の100周年記念号のために撮った写真でも、クラウディア・シファーやシンディー・クロフォードといったモデルたちは揃って白いシャツを着ています。こちらは1992年風に、腰のところで裾を結んでいるスタイルです。

matchesfashion.comの創設者であり、ロンドンで最も年季の入ったおしゃれな女性であるルース・チャップマンも、よく白いシャツを着ています。「疲れた顔をさっぱり見せてくれますからね」とチャップマンは言います。「赤い口紅と白いシャツは、どんな時にも頼りになるスタイルです。夜のイベントには大きいスカーフを巻いて。白いシャツと口紅は、私のワードローブの中心です。仕立てられた白いシャツも大好きですが、オーバーサイズの襟のないシャツを、袖をまくり上げて着るのも好きなのです」

グラントにとって、白シャツのアイドルは「ダイアナ妃やビアンカ・ジャガー、ジーン・セバーグ、シャーデー、ブリジット・バルドー、フェイ・ダナウェイ、それからジェーン・バーキン」だと言います。Matchesのファッション/バイイングディレクター、ナタリー・キンガムはさらにこう付け加えます。「ダイアン・キートン、キャロライナ・ヘレラ、それからパティ・スミス…… 白いシャツがこんなにも長い間シックなアイテムになっているのは、このようにバラエティ豊かな女性たちが、それぞれの着こなしを見せてくれているから。私自身も何枚も持っていますし、飽きることなどありません」Matchesではロゴ入りのバーバリーのもの、後ろの裾がエレガントに揺れるRAEYのもの(225ポンド)、M.i.hのオーバーサイズのコットンのもの(155ポンド)など、白いシャツが飛ぶように売れています。

白いシャツには平等主義的な雰囲気や、ジェンダーニュートラルな感じがあり、それが最近のワードローブとして大ヒットしている理由なのでしょう。ヴィクトリア&アルバート美術館の展示では、フリーダ・カーロの華麗で型にはまらない美しさが祝福され、女性らしさの狭い意味での定義があらゆる面で見直されています。だからシャツを着ることで、あなた自身がそうした状況のすべてを反映することにもなるのです。「衣服としてのシャツには、豊かな伝統があります」パルマー・ハーディングのレヴィ・ハーディングはそう話します。「たとえばホワイトカラー対ブルーカラー、マスキュリン対フェミニン、などです」
インスタグラムの存在により、私たちの生活は否応なくスタイリング競争に巻き込まれるようになりました。そして白いシャツはそのシンプルさのために、スタイリングスキルをより際立たせることになるのです。サセックス公爵夫人となったメーガン・マークルが、ミーシャ・ナヌーの「ハズバンド」シャツを着ていたことであそこまでの大騒動を引き起こしたのも、シャツの裾をタックインする彼女のやり方が完璧だったからでしょう。「今、白いシャツが斬新に感じられるのは、製品自体ではなく、その着こなしのためです」ハロッズの女性服売り場でカリスマ的存在として知られているマリア・ミラノはこう言います。「白いシャツはいかにもな場所ではなく、意外な場所で着てほしいですね。たとえばビーチで羽織ものにするとか、ハイウェスト・ジーンズの上から80年代風に腰に巻いてみるとか。無頓着な感じに見せることで、白いシャツの堅苦しさを取り払ってみてください」(ミラノは、完璧な白いシャツとしてヘルムート・ラングを挙げています)

ここまで書いてきましたが、最後に私自身の裏技も紹介しましょう。と言っても、ずうずうしくも、PRとして働いているオシャレな友人の真似をしただけなのですが。それは、シンプルな白いシャツにイニシャルを入れて、自分仕様にカスタムするということ。昔からあるシャツメーカーは、たいていカフスにイニシャルを入れてくれるのです。私はJ.C.Mのお気に入りの白いシャツのカフスに刺繍をしてもらったのですが、それがどんなに心踊ることか説明しきれないほどです。そのささやかさに不釣合いなくらい、自信がアップします。チャールズ・ティアウィットのクラシックな白いシャツは30ポンドほどで買えますが、1文字8.95ポンドでカフスにイニシャルを入れてもらえます(フォントと色も選べます)値段は倍になってしまいますが、特別感はそれ以上のはずです。これでワードローブの危機は乗り越えられそうでしょうか? 白いシャツには、ルビー以上の価値がありますよ。
この記事は、The GuardianのJess Cartner-Morleyが執筆し、NewsCredパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせは、legal@newscred.comにお願いいたします。
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