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物と私たちの幸せな関係

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物が人を幸せにすることはあるのでしょうか? 私たちは長い間、もっと幸せになりたいのであれば、物ではなく体験に投資するようにと言われ続けてきました。では、私たちを支えてくれる普段の買い物−−たとえば着心地のいいセーターやパールのイヤリング、新鮮な切り花−−は、ただその場の気分を盛り上げてくれるだけのものなのでしょうか?

「多くの人は、本当の喜びは内側から湧き出るものだという考えに慣れてしまっています。そのため、暮らしのなかにある物質的な物は、私たちの幸福に直接的には関係のないものだと思ってしまうのです」『Joyful: The Surprising Power of Ordinary Things to Create Extraordinary Happiness』の著者イングリッド・フェテル・リーはそう説明しています。「しかし私の調査によれば、身の回りにある物は、私たちの心の健康に驚くほど強い影響を与えているのです。たとえば花を例にとってみましょう。調査の結果、花が身近にあるだけで、人は気分がよくなり、不安も減り、また記憶力も高まることがわかっています。さらには手術後の入院患者が摂取する薬の量まで減ることもあるのです」

フェテル・リーによれば、人工の物でも同様の効果があるといいます。たとえば丸みがあったり、シンメトリーの形をしたものはポジティブな感情を引き出すのに対し、尖っていたり角があるもの、そしてアシンメトリーの形をしたものは、ストレスや悲しみを連想させるというのです。

実際の研究でも、角がある物は脳の扁桃体と呼ばれる部位の活動を促すことがわかっています。扁桃体は、恐怖や不安といった感情と結びついている場所です。このように物が深いところで私たちの幸福に影響を与えているのは明らかです。私たちが意識できないところで起きている反応もあるのです」とフェテル・リーは話します。「生活する上では欠かせない物もあるのですから、そうした物に気持ちを乱されるのではなく、喜びや心の健康を高める手段として使えたらいいですよね」

パーソナルな物にはパワーがある

ある物が人にポジティブな反応を与えるひとつの理由として、それがごく個人的な愛着を表しているという場合があります。「それは自分の性格なかでも特殊な側面に反応していたり、または具体的な思い出に関連していることと、何か関係があるはずです」とフェテル・リーは説明しています。

物は、記憶を呼び出すための強力なパイプ役を果たすことがある、とフェテル・リーは続けます。特に匂いや音といった感覚は、記憶をつかさどる脳の部位と密接に繋がっていると言うのです。

メアリーワシントン大学の心理学部教授、ミリアム・リス博士も同様の見解を示しています。「匂いのするもの、とくに何かを思い出させるような匂いを持つ物が私たちに強い影響を与えるのは、匂いを処理する脳の部位が、感情を処理する部位と密接に結びついているからなのです」『Balancing the Big Stuff: Finding Happiness in Work, Family, and Life』という本の著者でもあるリス博士は、続けてこう話します。「嗅覚が感情と結びついているのは、私たちの嗅覚器官が、感情や記憶を処理する部位である扁桃体や海馬といった、脳の辺縁系と緊密な繋がりを持っているからなのです」
リス博士は、ある物がポジティブな経験や自分の愛する人々のことを思い出させてくれる場合、たとえば特別な旅行に出かけた記憶や、幼少期のいい思い出を呼び起こしてくれる時、物は私たちに最大限の幸福を与えてくれているはずだと言います。

「私たちの心の健康というのは、誰かを身近に思えたり、繋がっていると感じられることに密接に関係しているのです」とリス博士は説明します。「だから、誰かのことを思い出させてくれる物や、誰かから贈られた物に親しみを感じるのであれば、それは私たちに幸福を与えてくれるはずです」

また、物質的な物は、体験と比べて、過去・現在・未来と、時間に関係なく喜びを与えてくれる可能性が高いそうです。

「これは人間の脳の驚くべき特性でもあるのですが、私たちには多様な時間規模で喜びを感じられる能力があります」とフェテル・リーは言います。「現在形で喜びを感じられるのはもちろん、過去の出来事から喜びを得ることもできますし、未来のことを考えて喜びに浸ることもできるのです。たとえばデスクに貼りつけてあるコンサートチケットや、これから行く旅行のために新調した水着といった、未来の出来事も楽しみに待つことができます」

物には継続的なパワーがある

物にあって、体験(たとえばロッククライミングの瞑想的体験)にないものをひとつ挙げるとしたら何でしょうか? それは、物はそこに存在し続けるということです。

もちろん、古くなったり流行遅れになったりと、物にはマイナスイメージが持たれることもあります。しかし、ブリティッシュコロンビア大学で心理学を教えているエリザベス・ダン博士は、物を持つポジティブな効果についてこう話しています。「もしあなたが喜びを感じられる物を持っていて、その気持ちを今も感じられるのだとすれば、それは永続的な喜びをあなたに与えてくれるはずです」ダン博士は科学アドバイザーとして「Joy」という携帯アプリの制作にも携わっています。「Joy」は、人が何を購入した時に高い喜びを感じているのかを、実際に調べることができるアプリです。

物は、過去との繋がりで私たちに継続的な影響力を持つだけではなく、現在においても同じくらい強力な感情を引き起こしているそうです。ダン博士と仲間の研究者たちは、人々が消費行動をした時にどのような感情を抱くのかを調査しています。調査の結果、多くの人は体験することにより高い満足度を感じているものの、物質的な物からも確かに喜びを得ていることもわかりました。
「強烈さで言えば、体験の方が大きいかもしれません。しかし物自体にも、人の気持ちを高めてくれる効果が確かにあるのです」とダン博士は話しています。「たとえば、私はこの革のブーツを新しく買ったのですが、これを履いていると最高の気分になります。このブーツについて四六時中語ったりはしませんが、でも金曜の夜、これを履いた途端にとてもいい気分になるのです。そしてこれこそが、物質的な物が私たちにもたらしてくれることなのです。みんながあまり注目していないメリットだと思います」

また、これも覚えておきたいことですが、物は迷信的なパワーをもたらすことがあります。

「物が喜びを与えてくれるまた別の可能性として、私たちは物に迷信的なパワーを見出すことがあります」とリス博士は言います。「もし、私たちがある物にはパワーがあると思える場合、たとえば試合に勝つことができるとか、ネガティブな気持ちを払拭してくれると感じられる場合、それを必ず身につけていることで、物から安心感や自信を得ることができます」そうした物との迷信的な結びつきは、錯覚を基盤にした関係性ではあります。それでも、自分がそれを信じているということが、強力な効果をもたらしてくれることになるそうです。

喜びの先へ

とはいえ、物に喜びを見出す際には注意も必要です。「そこで、実際に自分が何から喜びを得ているのかを知るための、個々に合わせた提案方法を見つけることが、次の課題となります」ダン博士が「Joy」の制作に携わることにしたのも、そうした理由からだと言います。「買い物履歴から自分の満足度を測る…… そうすると、何を買えば一番自分が嬉しい気持ちになれるかといったデータを十分に得ることができます」

もし、あなたが人にインパクトを与えようとしているのであれば、物よりも体験の方が役立つ場合もあります。たとえば購入したばかりのiPhoneよりも、最近のメキシコ旅行について話す方が、人に嫌味を与えずに自慢できるかもしれません。「調査によると、人は物質型消費について話すよりも、体験型消費について語る時の方が好かれやすいという結果が出ています」とダン博士は言います。

それでもフェテル・リーが言うように、たとえそれをどこで見出そうと、自分の喜びを見つけることは私たちが生まれながらに持っている権利であり、とても重要なことです。

「自分の身の回りにあるものに喜びを見出すことは自然な行為です。そしてそうした喜びが、私たちの心の健康に本質的に結びついているのだと気づくことができれば、物質的な物に幸福感を抱くことを、もっと受け入れやすくなるはずです」とフェテル・リーは話しています。「物を持つことを無駄遣いの道楽と捉えるのではなく、最高の自分を引き出し、自分との繋がりを深め、生産性や想像力を高めてくれるツールだと考えることもできるのです」
この記事の初出はSheKnowsです。

この記事は、StyleCasterのBrianne Hoganが執筆し、NewsCredパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせは、legal@newscred.comにお願いいたします。
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