Culture  

連載 CREATOR'S EYE
第3回「自分の体の一部になっている道具」

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雑音を心地よい音楽へと変える

音楽アプリ『Bloom』

ラッパー・環ROY

1920年代、フランス人作曲家のエリック・サティは、日常生活を妨げずに聴くことができる音楽の在り方を模索し「家具の音楽」を作曲しました。現在でいうところのBGMに似た考え方で、当時としては新しい、音楽との付き合い方を提案しました。それから約30年後の1952年、周囲の偶発的な音に意識を傾ける姿勢そのものが音楽であると考えた実験音楽家のジョン・ケージは、無音で構成した「4分33秒」を作曲しました。
そして1978年、アメリカ人音楽家のブライアン・イーノは、ある特定の場所や空間で聴く人を包み込むように音楽が存在することを目指して「Ambient 1: Music for Airports=空港のための音楽」を作曲しました。これが「アンビエント・ミュージック(環境音楽)」という概念のはじまりです。イーノはサティ、ケージからの影響を公言しているそうです。
『Bloom』は、イーノが提案する「アンビエント・ミュージック」を生成し続けるアプリケーションです。アプリから出力される音と、周囲のさまざまな音(環境音、生活音)が混ざり合うことで、多様な音が音楽の一部であるかのように感じられます。ただの雑音が、音楽を構成する楽音へと変容するような、良い意味での錯覚を誘発してくれます。
あまりに周りがうるさいと無効化されてしまうのですが(笑)。早く眠りたいのに外が騒がしいビジネスホテルや、自宅で子どもと昼寝をする時などに使うことが多いです。あとは、お風呂で本を読む時に再生しておくと集中できます。例えるなら、音のアロマみたいなことなのかも知れません。ちょっとした雑音が気になる時、リラックスするために、かれこれ10年近く使っています。
『Bloom』
対応端末:iOS
価格:480円
http://generativemusic.com
環ROY(たまき・ろい)
1981年、宮城県生まれ。最新作『なぎ』を含む5枚のCDアルバムを発表し、様々な音楽祭へ出演。劇場や美術館などでのパフォーマンスも多数。最近、生ワインというものを初めて知り、飲みました。美味しかったです。
http://www.tamakiroy.com/
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