クリエイティブな仕事をしている三人の方に、あるテーマにそってモノやコトを推薦いただく本企画。6回目のテーマは「思い出の絵本」です。詩的な世界観や哲学的な絵柄、勇気をもらえるお話を描いた3冊をご紹介します。
詩を読むこと、絵本を読むこと
『だいじょうぶだよ、ゾウさん』
ラッパー・環ROY
数年前、たまたま用事があって日比谷駅に行くことがありました。ちょうどその時、日比谷公園でオクトーバーフェスが催されていたので立ち寄ったんです。珍しいビールでも飲んで園内を散策してみよう、なんてしていたら立派な建物がある。なんだろうと思って入ったのが日比谷文化図書館でした。
そこで紹介されていたのが絵本『だいじょうぶだよ、ゾウさん』(文溪堂)です。なんとなく手にとって、その場で読み、思わず涙してしまいました。以来、ずっと心に残っていて、子どもが生まれたタイミングで購入しました。
年老いたゾウと若いネズミの対話を通して、生と死を描いた物語です。言葉は少なく、余白は多く、抽象的表現が比喩となって、様々な想像を喚起してくれます。うまく説明できないのですが、こういうお話って、なんとも言葉にできないからこそ、きっと絵本になっているのでしょうね。
近年、このような表現に出会ったとき、詩を読んでいるみたいだな、と感じて手元に置いておくようになりました。『ぼくのたび』(ブロンズ新社)、『100万回生きたねこ』(講談社)など、子どもに読んであげたいと同時に、自身でも読みたくなるような絵本がいくつもあって、それは僕が普段やっている、詩を書くこと、と通じているからなのだと思います。
『だいじょうぶだよ、ゾウさん』
ローレンス・ブルギニョン作、ヴァレリー・ダール絵、柳田邦男訳(文溪堂)
https://www.amazon.co.jp/dp/4894234386
環ROY(たまき・ろい)
1981年、宮城県生まれ。最新作『なぎ』を含む5枚のCDアルバムを発表し、様々な音楽祭へ出演。劇場や美術館などでのパフォーマンスも多数。現在、丁度絵本を作っているところです。
http://www.tamakiroy.com/