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空はすべてのスタート地点 NASAの若きエンジニア ファーラー・アリベイ

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ファーラー・アリベイが宇宙と恋に落ちたのは、8歳の時に映画「アポロ13」を見たことがきっかけでした。「広大で、時に危険にも思える宇宙に魅了されたのは確かですが、それ以上に、エンジニアたちが結集して、解決不可能な問題に取り組もうとする姿に私はすっかり夢中になってしまったんです」とアリベイはインタビューで答えています。

 

現在31歳、NASAでシステムエンジニアとして働くアリベイは、カナダのケベック州にあるジョリエットで育ちました。NASAで働く人など聞いたこともないような小さな町です。「そんなことは、夢のまた夢だと思っていました」とアリベイは話しています。彼女の両親はマダガスカルから北アメリカに渡ってきた移民でした。若い頃からエンジニアになりたいと願っていたアリベイは、当時、自分がロールモデルにできるような有色人種の女性エンジニアどころか、そもそも女性のエンジニアがいないことに気づいていました。だからこそ、自分が少女たちのロールモデルになりたいとアリベイは願っているのです。

 

2018年11月、火星探査機インサイトの火星着陸に貢献したチームの1人として、アリベイは歴史に名前を残すことになりました。チーム内でタクティカル(戦術)シフトと呼ばれる任務のリーダーだったアリベイの仕事は、地球にいるNASA職員と探査機の間でのコミュニケーションを可能にする指令をコンピューター言語で構築することでした。「その当時、最後に火星に探査機が送られてから、すでに6年が経っていたんです。まだ年端もいかず有色人女性である私が、この役目にふさわしいと思うことはなかなかできませんでした。それでも次第に自分の判断を信じられるようになり、私に発言の機会を与えてくれる仲間にも出会うことができました」とアリベイはインタビューに答えています。「そして今、私は別の惑星にいる探査機と、コミュニケーションをとれるようにまでなったのです!」

先駆者として

 

アリベイは、自分がここまでのことを成し遂げられたのは、自分より先に活躍していた「最高にタフでかっこいい」女性たちのおかげだと話しています。「私は、各分野でベストを尽くしてきたすべての女性たちを尊敬しています。彼女たちは自分の信じることのために立ち上がり、ロールモデルとして他の女性たちのために道を築いてきたのです」。子どもの頃、アリベイが憧れていたのはフランス系カナダ人宇宙飛行士のジュリー・ペイエットでした。ペイエットはスペースシャトルの乗組員に二度選ばれた経験を持ち、カナダ宇宙庁の主任宇宙飛行士を務め、現在はカナダ総督(カナダ首相の助言によりイギリス女王が任命。名目上のカナダ軍最高司令官)に任命されています。「ジュリーは、伝統的に男性が担っていた役職に就いただけではなく、そこで最高の実績を残しています」とアリベイは話しています。「彼女がいたから、私は自分のことを信じ続けることができました。性別に関係なく、自分が決めたことなら何でも成し遂げることができると気づかせてくれたんです」。

障害を乗り越えて

 

アリベイが成功をつかむことができたのは、彼女に不屈の精神があったからでした。「ティーンの頃、肌の色が違うことでいじめにあっていました。オタクっぽいと、からかわれたこともあります」とアリベイは話しています。それでも、こうした逆境を経験したからこそ今の自分があるとアリベイは言います。学ぶことが大好きだった彼女は学業でも優秀な成績を収め、名門校であるケンブリッジ大学に合格、航空宇宙学を専攻しました。しかし華やかな成功の裏で、アリベイは自尊心の問題に苦しんでいました。

 

「大学では、誰もが競い合っているみたいでした。みんなが私より優れて見えたんです。裕福な家柄の人たちばかりでしたし、私立校出身じゃないのは、私を含めほんの数名しかいませんでした」。アリベイは過去を振り返ってこのように話しています。「それでも恩師の助言があったことで、私はようやく自分を立て直すことができました。人と自分を比べる必要はないと思えるようになったんです。大学は自分自身に学びを与える場で、私は自分ができることを精一杯やればいい。自分さえ努力を怠らなければ、他の誰かが何をやろうと関係ないということに気づきました」。アリベイはケンブリッジを最優秀の成績で卒業し、その後博士号を取得しています。

限界を押し広げる

 

アリベイの考える「タフでかっこいい」女性たちとは、自分のベストを尽くすだけでなく、他者のために声をあげ、社会に求められる役割を自ら新しく定義していくような人たちです。「たとえば、自分を疑わず、ステレオタイプを打ち壊していく人。そして自分の仕事や個人的な努力を通じて、社会的にも科学的にも、人間の限界を押し広げていくような人。それから、失敗した時には先輩や仲間たちに助けを求め、うまくいっている時には自分の所属するコミュニティを鼓舞し、周りの人たちを引き上げることができる人。そんな人が、私にとってのかっこいい女性なんです」とアリベイは話しています。

次世代の女性たちのために

 

アリベイはまた、少女たちに「姉」のように寄り添い、導く「Big Brother Big Sister Program」など、いくつかのボランティアグループに所属し、若者たちの指導者としての活動も行っています。「こうした活動をはじめて3年になりますが、若い女性たちが自分にも力があることに気づき、夢を追う姿を見てとてもうれしい気持ちになります」とアリベイは話しています。また、彼女は児童養護施設を利用している子どもたちを支援する CASA Los Angelesでの活動も続けています。「私は、子どもたちが外に飛び出し、世界を変えていけるように励ましていきたいのです」とアリベイは力強く語っています。「みなさんは、空が世界の限界だと思っているかもしれませんが、宇宙を仕事にしている私たちにとって、空はスタート地点なのです」。

伝えたいこと

 

「自分が興味のあること、夢中になれることを見つけて、そこからキャリアを描いていってほしいです。決して妥協せず、『あなたには無理だよ』 なんて誰にも言わせたりしないでください」。そう話すアリベイは、同時に失敗も学びの一部だと認めています。「たとえ失敗しても、立ち上がればいいのです。そして諦めずに続けること。本当にやりたいと思うことがあるなら、何かをするのに遅すぎることなんてありません。何度でも、新しくやり直す価値があるはずです」。

 

 

この記事は、InStyleのOmenaa Boakye執筆し、NewsCredパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせは、legal@newscred.comにお願いいたします。
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