Culture  

連載 CREATOR'S EYE 第11回
刺繍作家・小菅くみの毎日を幸福にする、銭湯とサウナ

“いま”の時代や文化をつくる人たちが、出会えてよかったモノ・コトを発信するコラム「CREATOR'S EYE」。今回は刺繍作家の小菅くみさんが、銭湯とサウナの体験を通して得られた多幸感やくつろぎの大切さについて、ゆったりと伝えます。
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身一つですべてから開放される銭湯

大人になり、仕事が忙しく疲れたなと感じていたころ、なんとなく天然温泉のある銭湯に行ったことがあります。そのときふと、サウナ好きの友人が熱くサウナをすすめてくれていたことを思い出し、「今日はサウナにちゃんと入ってみよう」と試みることに。それからというもの、今では週に3〜4回通ってしまうくらい銭湯に、そしてサウナにハマっています。
思い返すと、幼いころから温泉好きな父に連れられ、少し遠出をしては温泉に行っていたので、大きなお風呂に入る楽しみや開放感は昔から身体が覚えていたのかもしれません。
銭湯を満喫している1時間半ほどの間は、メディアや携帯電話から離れ、湯船やサウナ室で静かに自分の精神と向き合うことができます。また、サウナを堪能して熱のこもったサウナ室から出た後は、風が気持ち良いなとか、水風呂に反射する光がきれいだなとか、普段忘れがちな様々なことに気付かされます。それだけで極上の恍惚感に包まれ、脳内が幸せ物質だらけに。銭湯からの帰路もずっと、ほかほかの身体に冷たい夜風を浴びながら、多幸感に包まれるのです。

心と身体のバランスを保つ場所との出逢い

ある銭湯には炭酸泉や天然温泉があったり、またある銭湯は木の香りがするサウナ室や気持ちの良い露天があったりと、それぞれの銭湯の良さを感じるのも楽しみのひとつ。なかでも池尻大橋の文化浴泉は仕事の前後にアクセスしやすい場所にあるということもあり、よく訪れています。nano湯というナノバブル粒子が多数含まれる気泡湯があるのですが、日曜日には薬湯に入れ替わるという心遣いも嬉しいところ。門構えも浴室も、近代的でかっこいい。アロマの香りで満ちたサウナ室は、余計なものがなく静かに流れるジャズを聴きながら落ち着いて過ごせるので、流れる汗とともに身も心もクリーンになれるのです。
私は昔からじっとしているのが苦手で、仕事と同時進行でいろいろやってしまうたちなので、この「何もしない時間」をとても特別でぜいたくなものだと感じています。銭湯で体験できる恍惚感のなかから生まれた仕事のアイデアもたくさんあり、いまの私にとって、なくてはならない場所となりました。
たとえどんなに嫌なことがあっても、銭湯に行けば、365日ほぼ毎日が良い日に変えられるようになりました(笑)。銭湯とサウナという一人遊びに出逢え、心身ともにととのっているいま。いくつになってもどんなときでも、楽しいことに出逢える可能性はあるのだと、次の出逢いを求めて常にワクワクしています。
小菅くみ(こすげ・くみ)
Profile/刺繍作家。東京都生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒。刺繍ブランド〈EHEHE(エヘヘ)〉の刺繍を中心とした作品を製作。人物や動物の繊細な表情までを刺繍で表現している。ほぼ日刊イトイ新聞の“感じるジャム”“おらがジャムりんご”シリーズでは、レシピ開発を担当している。 2017年3月初個展「吾輩の猫である」(京都 誠光社)、2018年6月「NEO.手仕事」(東京 QUIET NOISE arts and break)、2019年7月「夢の晩餐」(東京 CANDLE CAFE)その他多数のグループ展に参加。
https://www.instagram.com/kumikosuge/
https://twitter.com/kumidesuyone
Text&Photography by KOSUGE Kumi
SpecialThanks 文化浴泉
Edit by KAN Mine
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