Culture  

連載 CREATOR'S EYE 第13回
実業家・ハヤカワ五味を「すっぴん」にする、バーでのフラットな語らい

“いま”の時代や文化をつくる人たちが、出会えてよかったモノ・コトを発信するコラム「CREATOR'S EYE」。今回登場するのはファッションデザイナーであり、実業家のハヤカワ五味さん。彼女が通いつめるバーは、ビジネスの世界で生きる人をときに“普通の人”として迎え、フラットな視点で人と関わらせてくれる、とっておきの場所のようです。
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“あのひと”から解放されるバーでのひととき

私はお酒が好きです。といっても「毎日何杯も飲んでます」というわけではなく、お酒を飲みながら語らうカルチャーが好きなのです。20歳のころは当時住んでいた中野のチョコレートバーに週2、3回通い、その後は酔うとうるさいマスターがいる代々木上原のオーセンティックバーに、そして最近では知人の紹介で会員制のクローズドなバーにちょくちょく足を運んでいます。
普段「ハヤカワ五味」という名前と「起業家」という肩書きで生活しているので、どうしても「起業家のハヤカワ五味」というような様々なフィルターを通して人と関わることが多くなってしまいます。ですが、バーでは皆が共有しているのはお酒のみで、薄暗い店内なら相手の顔もよく見えませんし、初対面であれば相手の職業も分かりません。
世間の評価や肩書きから解放されて“すっぴん”の状態で誰かと話す――そうしていると、普段自分がいかに偏った環境に身を置いていて、先入観を持った話しかできていないかに気づかされるのです。そんな状態で人と会い、利害関係などを意識しないフラットな環境に身を置くことがいかに尊いことか……!

「成果」を求めないコミュニケーションのおもしろさ

職業柄、普通に過ごしていると誰と話すにも仕事の話ばかりだったり、ビジネスを前提としたコミュニケーションだったりと、良くも悪くも一般的な価値観から逸脱しがちになります。それが自分の肩書きも見た目も伝わらない薄暗いバーの空間だと、当たり前のように家庭の話や趣味の話、今日の芸能ニュースまで広く触れることになります。
私が通いつめている代々木上原のバーでは、毎日のように政治の話がされていますし、どんな人であってもニュースや世の中の出来事に関するスタンスや意見を持ち、対等な関係で会話が繰り広げられるのです。夜が深まりお酒が回ってくると、お客とマスターが大ゲンカになっていることもありますが、それもまたおもしろい。
そんな「肩書きを脱ぎ捨てられる場所」として、バーはいつでも私を待ってくれています。
ハヤカワ五味(はやかわ・ごみ)
Profile/1995年東京生まれ、多摩美術大学卒業。株式会社ウツワ代表取締役。大学入学後にランジェリーブランド〈feast(フィースト)〉、2017年にはEコマースを主としたワンピースのブランド〈DoubleChaka(ダブルチャカ)〉を立ち上げた。2018年にはラフォーレ原宿に直営店舗〈LAVISHOP(ラビショップ)〉を出店。2019年より生理用品のセレクトショップ〈illuminate(イルミネート)〉を始動。

https://hayakawagomi.com/
https://twitter.com/hayakawagomi
https://note.com/hayakawagomi
Text by HAYAKAWA Gomi
Edit by NARAHARA Hayato, KAN Mine
Photo ©️Nayuki/A glass of white wine on the bar counter/Adobe Stock
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