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常識を疑い、新しい“光”にたどりついた女性たち

これまで老化を引き起こす要因とされてきた太陽光。そんな太陽光のなかに、肌に良い影響を与える波長「赤色光」が存在することに着目したポーラの研究開発チームは、赤色光を透過させる新しい日中用クリーム「B.A ライト セレクター」を開発しました。そこで今回、「光」をモチーフに新しい価値を創造している建築家・永山祐子さん、視覚ディレクター・河野未彩さん、ポーラ 「B.A」のブランドマネージャー・高橋佐和子さんの鼎談を実施。光がもたらす可能性について、構造やデザイン、テクノロジーなどの観点から紐解きます。
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光でしか作り出せない空間と時間

普遍的な存在でありながら、身近過ぎるゆえにその有意性を見過ごされがちな「光」。そんな光を扱う各界のプロフェッショナルたちは、日ごろどのようにして光と向き合っているのでしょうか。
「建築は床、壁、天井といった物質で構成されていますが、空間を作るうえでは光も同様に重要な要素だと考えています。光そのものからアイデアを生み出すこともありますし、光の影響を考えて空間を作る場合もあります」と語るのは建築家の永山祐子さん。
永山さんが手掛けたパティスリー兼住宅の「勝田台のいえ」では、一階と二階の間に空間を作り、二階部分の“床”を庇(ひさし)にすることで商品に直射日光を当てず、空間に反射した自然光を取り込むことを実現。
Photo by 阿野太一(Daici Ano)(左)、山本育憲(Ikunori Yamamoto)(右)
また、ショッピングモール「tonarie大和高田」の広場では「上から強い光で照らされるとどこか監視されているような気になってしまいリラックスできない」という人間心理を考慮して、膝から上の光を作らない照明を設計。こうして永山さんは人がより居心地よく感じられるための重要なファクターとして光を活用しています。
Photo by 表恒匡(Nobutada Omote)
同様に、光を用いて人の知覚へ効果をもたらすクリエイティブの世界では、光をどのように捉えているのでしょうか。ミュージックビデオやCDジャケット、ファッションビルの広告などのアートディレクションを手掛ける、視覚ディレクターの河野未彩さんは光を構成する三原色に着目。そのルーツは、プロダクトデザインを専攻していた大学時代にあったようです。
「普段はポップな色や極彩色を使うグラフィックデザインの制作が多いのですが、大学時代からプロダクトの外側だけでなく内側も作りたい、という感覚がずっとあって。その時に考えていたアイデアを形にしたのが今回の作品です」と取り出したのが、「RGB_Light」と呼ばれる作品。
このライトでモノや手を照らすと影に色がつく
「この作品は光を作っているのではなく、影を作っているんです」と河野さんが話すように、ライトをつけると影に色がつく仕掛けになっています。通常、モノに光が当たると光源の延長線上に黒い影ができます。光源を増やせばその分影も増えますが、そこに3つの異なる色の光を灯すことで影に色がつく、という原理に着目。光源の色をコントロールすることで、影の色を自在に操ることができるというもの。
「光って自然と心地良さを与えてくれる効果もあると思うのですが、エンターテイメントの世界では驚きや、楽しみを与えてくれる存在だと考えてこの作品を作りました。アプリから簡単に影の色合いを変えることができるので、『RGB_Light』によって家でも店舗でも特別な空間や時間を創出することができると思います」と語る河野さん。

原理を追求し続けることで見えた新しい可能性

高橋佐和子さん(左)、永山祐子さん(中央)、河野未彩さん(右)
「影を作り出す」という発想の転換によって光の新しい可能性を見出した河野さん。それを受けて、ポーラ「B.A」のブランドマネージャー・高橋佐和子さんは、商品開発のきっかけとなった「赤色光」への着目においても、逆転の発想が重要なターニングポイントだったと語ります。
「美容の世界においてこれまで20年以上にわたり、太陽光に含まれる紫外線が肌に影響を与え、老化現象を引き起こしていると言われてきました。なので、研究員も含め私たちはずっと太陽光は老化の一因と啓蒙してきたわけですが、ふと立ち返ってみると太陽は生命の源だし、太陽光を避けて生きるって何か違うのではないか、という疑問が出てきたんです。太陽光にもいい影響を与えるものがあるはずだ、と赤色光に着目し研究を長年続けた末、赤色光が皮下にも良い影響を与えているということを見つけたのです」
そうして生まれたのが、紫外線と近赤外線から肌を守り、肌に赤色光を透過させるポーラオリジナル処方「セレクトプロテクションヴェール」を採用した日中用クリーム「B.A ライト セレクター」。光を「選ぶ」という新発想をきっかけに新しいプロダクトが誕生しました。
B.A ライト セレクター
https://www.pola.co.jp/brand/ba/lightselector/
それでは、建築、視覚、それぞれの世界におけるプロフェッショナルである永山さんと河野さんは、光についてそれぞれどのような可能性を見出しているのでしょうか。永山さんは、「LOUIS VUITTON京都大丸店」の建築において重要な意味を持つファサードのデザインを通じて、光の可能性を感じられたと話します。
「モノクロの縦格子(ストライプ)が入ったファサードを設計したのですが、この縦格子は“モノ”として物理的に実在させているのではなく、光の透過率によって“闇”を生み出す偏光板という素材によって作り出される幻影を利用しています。なので、見る側が視点を変えたり移動したりすることで格子のデザインが変化していく。いわば光を活用した体験的な“コト”をデザインしているんです」
Photo by 阿野太一(Daici Ano)
Photo by 阿野太一(Daici Ano)
特定の方向の光だけを透過させる偏光板。一見透明な板を2枚の偏光板の間に重ねると、色が浮かび上がる
「光はこういったインタラクティブな取っ掛かりを生み出せて、そういう建築は見た人も参加している気分になれる。建築家は常にスケールに縛られているし、物質は経年で変化していくので時間には逆らえないのですが、そんな建築において光はスケールレスでタイムレスな存在。自由の象徴ですね」
一方で、作品の制作を通じて光の存在を捉え直した河野さんは、エンターテイメントとして光を楽しむだけではない新たな気づきがあったと言います。
「アート的なアプローチでいうと、影が黒色とは限らないっていうことにもっと可能性があるのかなと。光と闇、明るいところと暗いところのように二元論として語られてきたと思うんですけど、いまは多様性の時代で、ひとつの出来事にもあらゆる方向から光が当たるので、このライトで起きているカラフルな影といまの世の中に流れている雰囲気がちょっとリンクしているなと思いますね」
建築、視覚、美容、それぞれの世界のプロフェッショナルによる「光」の追求が、新しい体験や可能性を次々に生み出しています。鼎談も終わりに向かう最中にこぼれた「固定概念にとらわれず、柔軟な発想でアプローチしていくことがプロダクトを面白くするのかもしれない」という話も印象的でした。多様な角度から、物事の本質へとまさに「光を当てる」ことにこそ、新しい価値観を生み出すヒントがあるのではないでしょうか。
永山祐子(ながやま・ゆうこ)
Profile/1975年東京生まれ。1998年昭和女子大学生活美学科卒業。1998年青木淳建築計画事務所勤務。2002年永山祐子建築設計設立。主な仕事は「LOUIS VUITTON 京都大丸店」、「丘のある家」、「豊島横尾館(美術館)」、「女神の森セントラルガーデン(小淵沢のホール・複合施設)」など。JIA新人賞(2014)「豊島横尾館」、山梨県建築文化賞、JCD Design Award銀賞(2017)、東京建築賞優秀賞(2018)「女神の森セントラルガーデン」ほか、多数受賞。現在、ドバイ国際博覧会日本館(2020)、新宿歌舞伎町の高層ビル(2022)などの計画が進行中。

http://www.yukonagayama.co.jp/
河野未彩(かわの・みどり)
Profile/神奈川県横浜市生まれ。2006年多摩美術大学生産デザイン学科卒業。大学卒業以降はフリーランスとして、CDジャケット・MV監督・空間演出など数多くの作品を手がける。主な仕事は、ラフォーレ原宿の広告、Vogue FNO LANVINのアートディレクション、avex「DOLLHOUSE」「RELECT」の空間ディレクションなど。浅間国際フォトフェスティバル、SXSWなど作品の出展も行う。2019年に作品集「GASBOOK 34 MIDORI KAWANO」を刊行。影が彩る照明「RGB_Light」は2020年3月末に発売。

md-k.net/
Rgblight.net/
高橋佐和子(たかはし・さわこ)
Profile/1995年、ポーラ化粧品本舗(現・株式会社ポーラ)に入社。販売促進・教育・商品企画・店舗開発を経て、販売組織のエリアマネージャー、全社インターナルブランディングの室長を歴任。現在はポーラ最高峰ブランド「B.A」のブランドマネージャーとして、商品開発・宣伝・販売促進等の全体統括に従事し、社内組織のマネジメントを横断的に行っている。

B.A ライト セレクター
https://www.pola.co.jp/brand/ba/lightselector/
Photo by MISAWA Ryosuke
Text by ISHIZUMI Yuka
Edit by NARAHARA Hayato
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