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ヘミングウェイから村上春樹まで 作家に学ぶリモートワーク成功の秘訣

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リモートワークと孤独になること、いずれも得意な人が多い職業といえば、作家ではないでしょうか(修道士たちもそうかもしれません)。締め切りを抱え、「いま書かなくては」という情熱的なプロジェクトの最中にいる作家たちは、仕事を終えるために「缶詰」になることがあります。それはつまり、食料を買い込んで外の世界とのコミュニケーションを制限し、ルーティンを作ってそれに従い、きちんと休息を取り、健康的な食生活を送るということです。

 

というわけで、リモートワークと社会的な隔離を実現するのみならず、これを機に成長を遂げ、自分史上最高の仕事をするためのテクニックを、作家たちのルーティンを参考にしながらご紹介します。

 

ハードなことは先に済ます

チームで働いている人は、スケジュールを人と合わせる必要があるかもしれません。ですが個人で仕事ができるなら、早めにやるべきことを済ませてしまいましょう。

 

アーネスト・ヘミングウェイは毎朝6時から書き始めていました。その生真面目なルーティンは、書いていない時間の緩さを除いては、まるで中堅の会計士かと思うほどです。

 

「小説や短編に取り掛かっている時には、毎朝、日が昇り始めると同時に書くんだ」と文芸誌『Paris Review』に語っています。

 

家で仕事をする時には、まず、その日のうちにする必要があるタスクのなかで最も大きなものから始めましょう。プレゼンテーションの準備や仕上げなくてはいけないレポートなど、できるだけ早い時間に終わらせてしまうのです。世話をしなくてはいけない家族がいる人は、手一杯になる場面も多いかと思いますが、朝のうちならまだスケジュールを管理しやすく、頭も働かせやすいのではないでしょうか。それに早朝は、Eメールやグループチャットで送られてくるパンデミックの最新ニュースに邪魔されることも少ないかと思います。

 

熟考が必要な仕事をいったん終えてしまえば、もっとこまごまとした、反射的にできるような仕事に取り掛かることができます。このやり方を行えば、より短い時間で多くのことを終わらせることができるでしょう。追加で仕事が発生する可能性がある人は、受信ボックスを時折チェックしつつになりますが、残りの時間を読書やお菓子づくりなど、自分が好きなことに使うことができます。

 

ルーティンを作り、きちんと守る

リモートワークの生産性を上げたい場合には、できるだけ早くルーティンを作り、それに従った生活を送ることが大切です。

 

エンジン全開の作家たちのスケジュールは、まるで軍隊のものと見間違えるほどです。毎日決まった起床時間、目標文字数、ペンを置く時間、エクササイズの時間、お酒を飲む時間を設定し、実行するのです。今日の作家にいたっては、インターネットとSNSの使用時間もきちんと決めています。

 

人との交流の時間までスケジュールに組み込まれている場合もあります。グレアム・グリーンは小説『情事の終り』にこんなことを書いています。「若かったころには、情事にさえスケジュールを設けていた。恋にかまける時間は昼食後、と決めていた」。

 

まずは事前に計画を立てましょう。この記事を書いている私自身は、執筆中の時には前の晩のうちにTo Doリストを作成し、朝起きた時に何をしたらいいのかわかるようにしています。私は毎朝同じ時間に起き、すぐに仕事に取り掛かります。そしてリストに書かれていることを黙々とこなし、終えたタスクにしるしをつけていくのです。夜になるころには椅子の上でぐったりしていますが、何かしらはやり遂げたという実感を持つことができます。

 

カート・ヴォネガットは妻への手紙のなかで、自分のルーティンを説明しているのですが、そこにはすべてのことが書かれているといっても良いでしょう。「私は5時半に目覚め、8時まで仕事をする。朝食は家でとり、それから10時まで仕事。そのあと数ブロック歩いて街に出て、いくつかの用事を済ませてから近くの市民プールに向かい、30分泳ぎ、11時45分に家に戻る。それから手紙に目を通し、12時に昼食をとる。午後には学校の仕事があり、教室で教えているか、その準備をしているかだ」。

 

そして17時半になるとスコッチを飲み、22時にはベッドに入るそうです。そして1日のどこかで腕立て伏せや腹筋といったエクササイズをすると書いています。

 

毎日エクササイズをする

村上春樹は厳格なエクササイズ習慣を守ることで、こもりながらこつこつと書き続ける生活を維持しています。彼は2004年のインタビューで、このように話しています。「長編を書くモードになっている時には、朝4時に起き、それから5~6時間書き続けます。午後になると、10km走るか、1500m泳ぐか、両方することもあります。それから少し読書をして、音楽を聴きます。21時には寝てしまいます。毎日変わらずにこのルーティンです。繰り返しというのが重要で、それは一種の催眠術になります。自分に暗示をかけ、心のより深いところまで潜ることができるのです」。

 

小さなマンションの一室から出られないという人も、毎日運動しなくては身体も心も不安定になってしまう可能性があります。アプリを利用するなど、すきま時間活用法のヒントを参考に、自粛生活中にもエクササイズを心がけましょう。ある武漢のマラソンランナーは、自室のダイニングテーブルの周囲をぐるぐる回ることで、50kmのマラソンを達成したそうです。

 

インターネットは敵とみなす

インターネットがなかったら、人との社会的距離を保つことはもっと難しかったでしょう。これを書いている現在、私は自粛生活10日目に入りましたが、すでにたくさんの友人たちに連絡を取り、いままでより多くの地域の人たちとつながるようになりました。この10日のうちに、今年連絡を取った人の数を優に超えるやりとりをしています。しかし、肩越しに覗き込んでくる同僚もなく、SNSやショートメール、電話などで長いやり取りをしているところを咎められることもない状況では、何かしらの制約を定める必要が出てきます。パジャマ姿のまま、FaceTimeをして1日を過ごすわけにはいきません。

 

効率を上げたいのであれば、SNSや友人たちとの通話を遮断する必要があるでしょう。

 

作家たちは以前から、インターネットは仕事の敵だとみなしてきたようです。執筆中にオンライン時間を制限することにかけては、彼らはすでに何年も先輩です。

 

ゼイディー・スミスはスマートフォンを持っていないようですし、ジョナサン・フランゼンはWi−Fiがない部屋で執筆し、ネットに接続したいという誘惑に負けないために、コンピューターの接続ポートにテープを貼ってまでいるそうです。

 

スミスは『Woman of the Hour』というポッドキャストでこのように語っています。「オンライン上でも自分をコントロールできて、たとえばビヨンセをグーグルで検索していたら4時間半も経っちゃった、なんてことがないのなら問題ありません。でも、実際のところ、まさしくそんなことをしてしまうのが私なのです。高い倫理基準を持っているからではなく、私はただ書きたいし、やり遂げる必要があるのです。だからそれ以外のことはすべて、わきに置いておかないといけません」。

 

オーストラリア人の作家ベンジャミン・ローは、「Forest」というアプリをおすすめしています。このアプリを使えば、ある一定の時間、SNSやインターネットをオフにすることができるので、集中しやすいそうです。私は「Freedom」というプログラムを使い、自分が設定した時間はインターネットをオフにしています。だいたい毎日3~5時間ほどでしょうか。いちばんハードな仕事をこなしている朝の時間こそ、ぜひこうしたツールを使うことをおすすめします。

 

ウィリアム・シェイクスピアは疫病流行による隔離中に『リア王』を執筆した、というニュースがTwitter上で話題になっていました。このように家での時間を賢く使えば、きっとたくさんのことを成し遂げることができると思います。少なくとも、1日の仕事を早く切り上げ、『リア王』を読む時間に充てることはできそうですよね。

 

 

この記事は、The GuardianのBrigid Delaneyが執筆し、NewsCredパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせは、legal@newscred.comにお願いいたします。

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