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すべての人に役立つテクノロジーを 急成長を続けるフェムテック市場とは

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テクノロジー業界は歴史上、男性中心に発展してきました。しかし状況は変わり始めています。たとえば自分の身体について学べる製品や、インターネットをより良く利用するためのツールなど、私たちが日々関わるテクノロジーが、男性だけではなくすべての人々の役に立つように、多くの女性プログラマー、エンジニア、製造者たちが開発を続けています。

 

そうした分野で現在最も活発なのは「フェムテック(femtech)」です。フェムテックとは「female」と「technology」を組み合わせた造語で、女性特有の健康課題に取り組む企業が生み出す製品やアプリ、その他のデジタルサービスなどを包括したテクノロジーの総称です。妊娠・出産や生理、性生活など、女性のライフイベントを網羅しています。フェムテックの名付け親であるイダ・ティンは、体重や気分、睡眠時間、体力、欲求、出血量などを記録できる生理管理アプリ『Clue』の創始者です。フェムテックは、2025年までに500億ドル規模での成長が見込まれています。

 

この分野を劇的に変化させたタニア・ボーラーは女性向けの製品を開発するElvieの創始者で、これまでに2つの製品を送り出しています。2014年には女性が骨盤底筋トレーニングを行うためのデバイスとアプリを開発しました。デバイスはBluetoothで携帯電話に接続され、骨盤底まわりの筋肉の収縮と弛緩を交互に行うケーゲル体操の進行状況をトラッキングすることができます。また2018年8月には、コードレスでブラジャーに挟むだけのウェアラブル電動式搾乳機を開発し、ユーモラスな広告を展開しています。

 

Elvieは2017年の母の日に合わせて、ロンドンのショーディッチエリアに巨大なおっぱい型のバルーンを掲げましたが、それは公共の場での授乳や搾乳に対するネガティブなイメージに対抗する#FreeTheFeedキャンペーンに賛同の意を表したものでした。

 

「私はずっと、女性の権利運動家として生きてきました。研究と科学を通じて、それを実践しようとしてきたのです」とボーラーは話しています。彼女は性の健康の分野で博士号を取得し、HIVの感染予防や性教育、現代的な避妊方法などを伝える政府主導の教育事業からキャリアをスタートさせました。そして2011年に母親になったことで、骨盤底の健康問題について初めて知るようになったと言います。「女性の健康問題のなかでも、骨盤底の悩みはずっと隠されてきたものだと気づきました」とボーラーは話しています。「女性たちの多くは、実際に不具合を感じるようになるまで骨盤底のことなど考えもしません。しかしいざ問題が出始めると、その症状があまりに不快で気まずいものであるため、誰も積極的に話そうとはしないのです。Elvieを始めたのは、ジムに通うのと同じくらいの熱意で、骨盤底の問題に対してもっとみんながポジティブに考えられるようになってほしいと思ったからです」。

 

「子どもを産んだ女性たちは、走るときもトランポリンで跳ねるときにも尿漏れを気にしなくてはいけない、性生活を楽しむこともできないということを受け入れてきましたが、そうしたことはすべて『女性の問題』として覆い隠されてきました。ですが実際には、どれも改善できる問題なのです。だからこそ、もっとオープンに語り合う必要があると思います」。

 

フェムテックが成長を続ける一方、女性科学技術者たちは、テクノロジーをすべての人たちのものとするために、また新たな分野にも取り掛かり始めています。ボイステクノロジーもそうした分野のひとつです。倫理的テクノロジーのコンサルタントであるシャーロット・ウェッブは、テクノロジーとインターネットにおける不平等と闘うことを目的とした非営利団体「Feminist Internet」の創設者でもあります。学術研究者およびアーティストとしてキャリアをスタートしたウェッブは、テック業界における職場での女性差別のみならず、私たちが毎日触れる製品がはらむ差別を是正するために立ち上がりました。Feminist Internetが手がけた最新プロジェクトのひとつに、メンバーがデザインしたAI音声アシスタントがあります。ボストンで主催されたイノベーション分野のサミットEY Innovationで発表されたこのAI音声アシスタントは、人工知能がこれまでいかにバイアスのかかった精神に基づき設計されてきたかを教えてくれるものです。

 

現在、AI設計者のうち女性が占める割合はわずか22%です。そのため、私たちが利用するテクノロジーに性差別的、人種差別的、そして同性愛嫌悪なところがないかを確かめることは、非常に重要になります。「テクノロジーの多様化と言えば、女性に大きく焦点が当てられがちですが、それだけでは不十分です」とウェッブは話しています。「テック系の大企業においても、トランスジェンダーおよびジェンダーマイノリティーの人々の割合を示す統計は出ていないのが実情です。女性に対する統計はあるのに、そうした人々は指標としても認められていません。これは問題だと思います」。

 

ウェッブとFeminist Internetのチームは、テクノロジーを駆使してそれ自体がはらむ問題を取り上げるほか、「フェミニストAI音声アシスタント」の作成ガイドをデザインした、ジョジー・ヤングのようなフェミニストAI研究家ともパートナーシップを組んでいます。「インターネットには、人と人とをつなげ、社会にポジティブな変化をもたらす可能性が確かにあると思います。しかしネット上のいじめや罵倒、テック業界における不平等、そして構造的な偏見をAIシステム自体が再生産している状況など、いまだに多く存在する問題に取り組む必要があるのです」とウェッブは話しています。

 

テック業界に占める女性(ここには様々な人種の人々、様々な性的指向や障がいを持つ人々も含まれています)の割合を引き上げるための闘いは、このテクノロジー革新の時代において、女性の製造者やプログラマーが、女性を含めたすべてのマイノリティの人々にとって使いやすいテクノロジーを生み出すことにもつながっているのです。

 

テック業界が多様性を実現する5つの方法

 

コーディングの講座の主宰:テック分野で働く女性の割合はわずか17%で、この不均衡を解消することが業界の最優先事項となるでしょう。これを企業が実行するためには、職場での差別的な慣習を撤廃し、女性たちに必要な専門的トレーニングの機会を与えることができます。School of CodeCodecademyなど、基本的なコーディングやプログラミング知識が得られる講座への資金提供も増えているようです。

 

ダイバーシティ推進担当者の雇用:最新の研究では、人種や民族の多様性において上位25位に入る企業は、業界の中央値よりも高い収益をあげる割合が35%高くなることがわかっています。また別の研究では、包括的なチームは87%の割合でより良い判断を下すことができ、また決定のスピードも2倍になることがわかりました。多様性のあるチームの価値を理解し、それを実現するために、ダイバーシティ推進担当者を雇う会社が増え始めています。2017年から2018年の間には、インターネットの求人掲示板でダイバーシティ推進担当の求人数は18%増加したそうです。

 

女性のための助成金や資金:近年の調査では、女性創設者のスタートアップへの資金提供総額は2016年から増えていないそうです。しかし女性事業家を応援するEnrichHERや、Digital Skills Innovation Fundといった助成金制度など、より多くの女性やマイノリティの人々が、自身のプロジェクトや製品開発を実現し、会社を立ち上げるのを後押しする専門機関が現在いくつも存在します。

 

柔軟な勤務時間とリモートワーク:テクノロジーの進化により、机がところ狭しと並べられたオフィスの風景は変化し、また画一的だった勤務時間もより柔軟になってきました。最近の調査では、73%の会社員が、柔軟な働き方ができるほうが職場への満足度が向上すると答えています。テック業界はその最前線を担う存在として、子育て世代や介護中の人々、慢性的な病気を抱えている人々、そして都市部に住む余裕のない人々でも仕事ができる環境を提供し始めています。

 

障がい者の雇用機会の向上:現状では、労働年齢に達している健常者で職に就いている人の割合は78%となっています。しかし障がい者の場合、労働年齢に達していてなおかつ仕事を持っている人の割合は36%だそうです。こうした数字の差は是正される必要があり、テック業界は現在、様々な障がいを持つ人が日々直面する問題を解消する製品の開発をするなかで、当事者としての経験を持つ障がい者たちの雇用に力を入れ始めています。例としては、Googleが障がい者のための製品を積極的に開発しており、全従業員のうち障がいを持つ人の割合は7.5%となっているそうです。

 

この記事は、The GuardianのSabrina Faramarziが執筆し、NewsCredパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせは、legal@newscred.comにお願いいたします。

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