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ウェルネス効果にも期待 思考回路のスイッチを切るサウンドの力とは

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私たちの多くは、思考回路のスイッチを切って頭を休ませることが、これまでになく難しい時代を生きています。リラクゼーションを求めるにしても、ヨガやゆっくりお風呂に浸かることが有効だという人もいれば、それを苦行だと思う人もいるでしょう。

 

それでも、万人に共通と言えそうなリラックス方法がひとつあります。それは音楽を中心としたサウンドの要素です。歴史を通じて、人々は音楽が持つ癒しの力を様々なかたちで享受してきましたし、その治療的な作用は科学的にも支持されています。たとえばナレーションなどの指示にしたがって行う誘導瞑想からPodcastまで、ウェルネスを追求する上で、サウンドの要素はあらゆる面で活用されていると言えるでしょう。こうしたミックスメディアを利用したい場合には、たとえばSpotifyの新しいプレイリスト『Daily Wellness Mix』は、楽曲やサウンドスケープ、Podcastで構成されているので、導入として良いかもしれません。では、サウンドがそこまで私たちの気分に深い影響を与えているのだとしたら、どのように作用しているのでしょうか。

 

「音楽やその他のサウンドには、人の心理やホルモン分泌といった身体の生化学的な反応を変え、脳波に影響を与える力があります。それだけでなく、音楽を聴くことで心拍数や呼吸といった生理機能が変化し、音楽と同期することさえあるのです」。そう話すのは、サウンドセラピストのネイト・マルティネスです。クライアントがリラクゼーションと心身のバランスを保つのを助けるために、音楽やサウンドを用いたヒーリングセッションを行っています。マルティネスは、サウンドの要素は「人間にとって本質的な体験」だと考えています。

 

音楽を使ったセラピーを提供する「JB Music Therapy」の創始者で、自身も音楽セラピストであるジェニファー・ブキャナンは、音楽による気分の高揚をセックスや食べ物がもたらす作用と同等なものとして考えています。「人は音楽がもたらす快感を強く求めるものです。音楽と結びついたポジティブな感情は、人の欲求と快楽に関わる脳の報酬中枢の深い部分と密接に関係しているのです」。

 

こうしたポジティブな効果はドーパミンの分泌に伴うものですが、実際にはそれ以上の働きも起きているそうです。

 

「音楽が作り出す快感が、中脳辺縁系神経路を活発にさせていることを突き止めた画期的な研究があります。この中脳辺縁系神経路というのは、脳の報酬中枢で、人に高揚感をもたらします」とブキャナンは説明しています。さらに音楽は、人の感情ネットワークの調整を行う脳の扁桃体からの反応を引き出すこともわかっているようです。扁桃体は感情を誘発するだけでなく、私たちの思考様式に新しい枠組みを与える働きがあると言われています。

 

精神の落ち着きを得たいという人が増えるにつれ、瞑想やサウンドバスと呼ばれる音浴など、サウンドを利用したセラピーに注目が集まるようになりました。しかし外出がままならない人や、近場にセラピーを受けられる場所が見つからないという人は、どのような実践ができるでしょうか。

 

まず、自分がリラックスできると感じるサウンドや音楽、Podcastで構成されたプレイリストを探すか、自分で作ってみるのがおすすめです。インターネット接続なしで再生できるものであれば、たとえばSpotify Premiumなど、オフライン再生および広告なしで音楽を楽しめるサービスを利用することができます。Spotifyの『Wellness hub』には『スパ/マッサージ』、『瞑想』、『メンタルヘルスへの気づき』などカテゴリー別の曲が用意されているようです。自分の気分を盛り上げてくれる特定の音楽ジャンルがある人もいるかもしれません。ただ特にリラックス効果があるとされているサウンドもあります。マルティネスによれば、私たちは日常的に過剰な情報にさらされているため、よりシンプルに構成された音楽の方がリラクゼーションを得やすいそうです。「音楽がシンプルなほど、聞き手が心を解放する余地を与えてくれます」。またマルティネスは、サウンド瞑想が人気なのは、そこで使われる音楽が先を予想できない作りになっているものが多く、緊張を手放しやすいためとも話しています。

 

一般的な瞑想は刺激が少ないため、初心者にとっては難しいことが多いようですが、「サウンドの要素をマインドフルネスのツールとして活用することで、たとえ自分が何をしたらいいかわからない状況であったとしても、瞑想的な精神状態に到達しやすくなります」とマルティネスは話しています。彼は自身のセッションでもこうした方法を活用しており、クライアントにも推奨しているそうです。

 

シンプルな構成の音楽やサウンドとは、歌詞がなく先が予想できないもの、また心を駆り立てるようなリズムを持つもののことを言います。そうした音楽は神経系に働きかけ、心に平静をもたらし、不安やストレスを軽減させる可能性があるとマルティネスは話しています。

 

さまざまな楽器を用いたセラピーを行う「Sound Awakening」のルイーズ・シールズも、マルティネスと同様の意見を持っています。シールズによれば、歌詞がないことで「理解したい」という思いを手放すことができ、思考回路のスイッチを切ることができるのだそうです。「ゆったりとしたアンビエント・ミュージックや左右の耳に微妙に異なる周波数が流れるバイノーラル・ビートは、脳波を穏やかにし、休息をもたらすシータ波の状態にするのにぴったりな音楽です」とシールズは説明しています。とはいえ、落ち着いた気持ちになれると自分が思える音楽なら何でも、同じように良い効果があるとも付け加えています。また、ダンスも瞑想と同様に気持ちを引き上げてくれるのだとか。大切なのは、自分にぴったりなやり方をいろいろと試してみることです。

 

「自分にとって最適な心地良さをもたらしてくれる音楽は、やはり自分で見出すものだと思います。聞いている時に自分がどんな気持ちになるかで、それがわかるでしょう」。ブキャナンは、10代の若者たちが激しいビートの音楽を聴きながらでも勉強できることを引き合いに出し、音楽の影響力は非常に個人的なものであると説明しています。

 

頭を休め、疲れた心を癒すために音楽を利用したいと思う場合には、忍耐力が大切になります。すぐさま達観した状態になることはなかなかないでしょうし、一般的に効果的だと言われている音楽を使ってもうまくリラックスできない場合もあるでしょう。それでも日々いろいろなプレイリストを試し、自分にとっての心身の健康を追求していくなかで、きっと自分にぴったりな方法を見つけることができるはずですよ。

 

 

この記事は、The GuardianのMarianne Eloiseが執筆し、NewsCredパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせは、legal@newscred.comにお願いいたします。

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