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「インポスター症候群」を乗り越えて ありのままの自分で輝くためのヒント

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もう20年近く前の話です。私は教職に就いたばかりだったのですが、いつも年間スケジュールに遅れをとっていました。この仕事に慣れてからは、扱うテーマについて熱く語りたいあまりに時間が足りなくなることもしばしばでしたが、当時は別の問題を抱えていたのです。そのころの私は、通常必要な量の2倍の教材を授業のたびに準備していました。

 

このように過剰に準備をしていたのは、情報量を増やすことで、少しでも自分を知的に見せたいと思ったからでした。教材をたくさん用意しておけば、私が若く、自信がない教授であるという事実を取り繕うことができると思ったのです。私は、自分が答えられない質問を学生たちから受けるのではないかと常に怯えていました。

 

「インポスター症候群」という言葉を知ったのは、それから数年後のことです。シェリル・サンドバーグの『LEAN IN 女性、仕事、リーダーへの意欲』という本で最初に見かけました。インポスター症候群とは、自分がその道のプロとしての資格を満たしていないと感じ、周囲の人から詐欺師に思われないかと不安になることをいいます。

 

こうした不安を抱えた経験は、もちろん私だけのものではありません。調査によると、少なくとも人口の70%がインポスター症候群に悩んでいるといいます。女性の方がかかりやすいそうですが、もちろん特定のジェンダーの人だけが抱える問題ではありません。

 

インポスター症候群は人に大きなダメージを与えます。自分には十分な能力がないという考えは、仕事上での成長を阻み、ゴールを達成したり、新たな機会を見出したりする障害になることがあります。

 

インポスター症候群は、基本的に完璧主義と同時に現れてきます。すべてを完璧にこなすことができれば、誰からも非難されないと考えることが多いからでしょう。このような思考が悪循環を生み、初めからうまくできないことに対して努力するのをためらったり、そもそも手をつけることもやめてしまったりすることもあります。

 

ですが、完璧主義は解消することができます。しかもそのために自分の基準を下げる必要もありません。ポイントは、すべてをうまくこなしたいという意欲を持ちつつ、同時に時には失敗することもあると理解しておくことです。失敗したって、あなたが詐欺師になるわけではないのです。

 

それでは、これからインポスター症候群と、その「親友」ともいえる完璧主義を克服する9つのヒントをお伝えします。

 

1. 自分に優しく

何かを始めたばかりなのに、すべてを完璧にこなせる人はいないでしょう。熟練になるまでの時間を、自分にたっぷり与えてあげましょう。すでに何年も続けている人の仕事と、始めたばかりの自分の仕事を比べないでください。私がよく学生たちに言うのは、誰かにとっての最高の努力より、失敗に終わった自分の努力の方に価値があるということです。完璧にこなすよりも、前向きに取り組むことの方がよっぽど大切です。たとえ失敗続きでも、失敗を恐れて何もしなかったころの自分よりは、うまくできているはずなのです。

 

2. 「成長マインドセット」を選ぶ

マリー・フォーレオは著書『あなたの才能を引き出すレッスン 「何事もなんとかなるマインドで夢を叶える」』のなかで、「硬直マインドセット」と「成長マインドセット」の違いを説明しています。

硬直した心構えを持つ「硬直マインドセット」の人は、成功の秘訣は努力ではなく才能にあると考えると、フォーレオは指摘しています。能力を持って生まれてきた人と、それ以外の人しかいないというのです。

 

硬直マインドセットの人は、挑戦することを避け、批判を受け入れず、人の称賛を求めて物事に取り組む傾向にあるとフォーレオは言います。

 

一方、成長を求める心構えを持つ「成長マインドセット」の人は、能力は努力や忍耐力、そして経験によって向上すると考えています。このタイプの人たちは、

 

・挑戦を追い求める

・建設的な批判を歓迎する

・挫折を学びの機会と捉える

・一生懸命仕事に取り組む

・成長することに強い意欲を持つ

・上達することはプロセスであり、それにはポジティブな態度が必要だと知っている

 

とフォーレオは書いています。ここで素晴らしいのは、誰もが成長マインドセットを自分で選ぶことができるということです。

 

3. 自分の功績について話す

職場におけるインポスター症候群は、仕事をうまくこなせないために、自分は何の功績もあげていないと信じ込むことで発症します。

 

ですから大切なのは、自分の功績を自分で認めてあげることです。学生たちはこれがことさら苦手なようで、自慢していると思われないために自分の成果や知識を過小評価していることが原因になっているようです。そこで私は学生たちにこのように伝えています。「自分が成し遂げたことを知ってもらいたいなら、自分自身で伝えること。代わりにやってくれる人は誰もいないのだから」。

 

就職面接や昇進面接の時には、自分の功績について話すことをためらわないでください。それが事実であれば、自慢になることはありません。

 

4. まずは小さな一歩から

ゴールを達成したいからといって、すべてを一気にやろうとしないことです。ゴールまでの道のりを小さなタスクに分解しましょう。どんなに小さなことでも、毎日続けて実践していくことで、ゴールに近づくことができます。

 

5. 自分を疑ってもいい

ゴールに向かって歩き始めると、自分を疑いたくなることもあるでしょう。しかしフォーレオによれば、これは「前進している証であり、諦めろというサインではない」そうです。自分を疑いたくなった時には、その気持ちをいったん受け止め、落ち着きを取り戻したあとで、また先へ進みましょう。

 

6. 自分の素質を知る

インポスター症候群に悩む人は、自分の成功をなかなか認められず、自分を褒める代わりに「運が良かっただけ」と考える傾向があります。しかし成功は運がもたらすものではありません。あなたが成功したのは、ゴールを達成するための知識と物事をやり遂げる能力を、あなたが持っているからです。ずばり、自分の成功をこのように受け止めましょう。

 

7. 失敗を自分自身に転嫁しない

インポスター症候群に苦しんでいる時には、些細なミスを犯しただけでも、自分は出来損ないだと思ってしまいがちです。ですが人はミスを犯すもの。こうした失敗は偶発的な出来事であり、自分の性格的特徴だと思わないようにしましょう。

 

8. 不安を共有する

自分がインポスター症候群を患っていると気づいたら、それを周囲の人に伝えてください。言葉にして吐き出すことで、不安や恐怖のパワーが弱まることがあります。また、自分がひとりではないと気づくことも大切です。とても優秀な同僚が「自信がない」などと言うと、とても信じられないと思うでしょう。しかしあなたがやっているのは、実はそれと同じことです。一緒に働いている人たちも、あなたと同じ気持ちを抱えているかもしれません。

 

9. 辛抱強くいる

短時間でゴールを達成することはなかなかできないもの。自分が予想していた以上の時間がかかったとしても、夢を諦めないでください。すべて成し遂げたと感じられるまで、そのまま先へ進みましょう。新しいゴールを見つけるのはそのあとです。

 

成長マインドセット選び、インポスター症候群を克服するには確かに時間がかかります。けれど、こうして悩みと向き合うことこそ、解決への第一歩なのです。ですから、自分には十分な能力がないと感じた時には、上記のアドバイスを参考に気持ちを切り替え、いかに自分が頑張っているか、自分に教えてあげましょう。

 

本記事の初出はProf KRGです。

 

 

この記事は、Business2CommunityのKenna Griffinが執筆し、NewsCredパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせは、legal@newscred.comにお願いいたします。

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