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連載 〈美しさの秘密〉
第1回 歌舞伎俳優・尾上松也「 伝統芸能を担う、美しき挑戦者」

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先達が起こした革新のバトンを未来へ

−歌舞伎という伝統を守ることと、革新してゆくこととについて、どのようにお考えですか。
歌舞伎には約400年の歴史があります。その中で、時代ごとに先人達が新作にチャレンジしてきて、さらに変化を重ねてきたからこそ残っていると思います。今、僕たちがやらせていただいている「古典」と言われる作品もすべて、最初に上演された時は新作だったわけです。先人達が培ってきた作品を何度も再演する中で、そのつど先輩方が色々と工夫をなさり、未来に受け継がれるように僕らにバトンを繋いで来てくださったと思っています。
−古いものをそのまま守るのではなく、つねに新たな挑戦を続け、更新されてきたからこそ続いてきた文化なのですね。
はい。例えば、僕が1月に新春浅草歌舞伎で勤めさせていただく『源平布引滝〜義賢最期』という演目は、1973年に(一五代目片岡)仁左衛門のお兄さんが復活されて、役の形というのを作りました。12月の歌舞伎座での『幸助餅』も、(四代目中村)鴈治郎のお兄さんが、松竹新喜劇で上演されていた作品を歌舞伎として初演して、主役を演じるのは僕で二人目なわけです。そのような形で、役者が変わっても受け継いで行けるものを、僕たちの世代でも新しく作ってゆければ。志としては、新作を作るときは、未来の古典となりうるように、そのつもりで取り組んで臨むべきだろうと思います。
−松也さんたち若手の方々が引き継いだその先、歌舞伎の未来に望むものはなんでしょうか。
僕らより若い世代の方に、もっと歌舞伎を見ていただきたい。それには、今のニーズにあった新しい作品を作り、見ていただく努力をしてゆかなければなりません。今は、歌舞伎座も一年中開場して、また東京以外でも多くの公演をさせていただいていますけれど、そうではなかった時代もあります。僕にはこのままだと再びそういう時代が来るという危機感があります。先輩方には今まで本当に良くやってきていただきましたから、次は僕らの世代が一致団結して、やっていかなければならないと思います。
−大きな挑戦ですね。これからのご自身の活動の抱負もお聞かせください。
他のジャンルに出演させていただく時も、観客の皆様には、その作品にいる僕を通じて、「歌舞伎を見たい」という気持ちを持っていただけたら嬉しい、そう常に思っています。そのためには僕自身がその場所で十分に輝けていないと興味を持っていただけませんから。常に最大限の力で挑んでゆきたいです。
尾上松也(おのえ・まつや)
Plofile/1985年生まれ。90年『伽羅先代萩』の鶴千代役にて二代目尾上松也を名乗り初舞台。若手が中心となる『新春浅草歌舞伎』では最年長のリーダー的な立場を勤めている。歌舞伎以外の出演作には、ミュージカル『エリザベート』(ルイジ・ルキーニ役)やディズニーアニメーション『モアナと伝説の海』声優(マウイ役)などがある。https://onoematsuya.jp/ 
Photographs by KAWAHARA Ryoko
Text by KUBOTA Azumi
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